【周辺環境】
フィーブル藩国の工業地帯は、海岸線に(地帯と言うからには、帯状に)広がっている。
無論、コレは、工業に必要な条件の一つである、水が大量に手に入るからだ。
砂漠と海に挟まれた小さなオアシスにとって、最大の課題は水であった。命の水とも言うべきオアシスを汚すわけにはいかないが、機械を作り動かす為には大量の水が必要だ。これを小さなオアシスから、海水に求めるのは自然な流れであっただろう。
無論、その苦労は語りつくせぬものではあるが、とかく海水のろ過と言う技術を開発して以来、フィーブル藩国の機械技術は爆発的に進歩したと言って良いだろう。
無論、海を汚せば貴重な海の恵みを失う事に繋がりかねないことから、同じくらい、工業排水の無害化にも力を入れていたのは、フィーブル人の努力と、諦めない根性の賜物であった。
工業地帯としては、輸出入に大変便利な港湾を付近に有しており、アイドレス工場もその中に建設されている。
【工場の様子】
工場内はほぼ完全と言える自動化が進められ、必要な職員は最低限で済むようになっている。究極のところ、仕事は機械に任せて、人と猫は機械の調子を見れば良い、と言う通り、機械のチェックと出来上がった製品の点検が主な業務だ。
だが、そこには機械に依存した堕落など尻尾の先も感じられない。工場の職員達は、一つ一つ、ネジ一本まで異常が無いか確認して、製品を生産している。
大規模な工業化が推し進められた工学技術の国、それがフィーブルではあるが、この国の人々は、機械の使い方、使い道を、良くも悪くも熟知している。
機械は富を得て、身を守り、生活を豊かにして、特には外敵を倒し。そのために常々、機械は使われてきた。
この国の人々は、機械が万能でない事を、よく知っている。万能であったのならあの時死ななかった人がいる。それをよく判っているから、ここまでフィーブルの国は発展している。
小さな国であったからこその、それは慢心や依存とは懸け離れた、ある種、人と猫と機械の共生の極致ともいえる。
こういった経緯により、工場は高い生産性と、高い信頼性を両立している。フィーブル人は、生産性を人の努力だけで補う(もしくは人の怠惰により上昇させる)ような愚劣を決して行わなかった。彼らは努力や根性の使いどころを、よく判っていた。
各ラインで分担して生産されたパーツは、逐一点検を受けた後、組み立てへと回される。人と猫と機械が協力して組み上げた鋼の巨人は、軍に納品されるまで家族同然の扱いで調整を受け、最終的に軍に納品される。
ラインで出た欠品や不良はすぐさま原因を究明される。こういう場合誰が悪い、という話にはならない。兎に角人員が少数なので、誰が、と言えば全員悪い事が多いのだ。
誰も彼もが、一生懸命である。フィーブルの工場には、フィーブルを生き抜いてきた人々の古臭い生き様の歴史が凝縮されている。
こうして作られたI=Dに、人と猫が乗り込む事によって、最愛の友人達と再会したメイド・イン・フィーブルの巨人は戦場へ出て行くのである。
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